不正競争防止法 (平成5年法律第47号)

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現在表示されている内容の施行日: 令和元年7月1日

最終更新(未施行の改正法を含む): 平成30年5月30日公布(平成30年法律第33号)改正

公布日: 1993年(平成5年)5月19日

制定文:不正競争防止法(昭和9年法律第14号)の全部を改正する。

第1章 総則 (第1条・第2条)

第1条目的

  1. 1.

    この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

第2条定義

  1. 1.

    この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

    1. (1)

      他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。...)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

    2. (2)

      自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

    3. (3)

      他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。...)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

    4. (4)

      窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。...)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。...)

    5. (5)

      その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

    6. (6)

      その取得した後にその営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

    7. (7)

      営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。...)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

    8. (8)

      その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。...)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

    9. (9)

      その取得した後にその営業秘密について不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

    10. (10)

      第4号から前号までに掲げる行為(技術上の秘密(営業秘密のうち、技術上の情報であるものをいう。以下同じ。)を使用する行為に限る。以下この号において「不正使用行為」という。...)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為(当該物を譲り受けた者(その譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生じた物であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)が当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を除く。...)

    11. (11)

      営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。...)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。...)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品1式であって容易に組み立てることができるものを含む。...)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。...)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。...)

    12. (12)

      他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。...)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品1式であって容易に組み立てることができるものを含む。...)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。...)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。...)

    13. (13)

      不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。...)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為

    14. (14)

      商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

    15. (15)

      競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

    16. (16)

      パリ条約(商標法(昭和34年法律第127号)第4条第1項第2号に規定するパリ条約をいう。...)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。以下この号において単に「権利」という。...)を有する者の代理人若しくは代表者又はその行為の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないでその権利に係る商標と同一若しくは類似の商標をその権利に係る商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用し、又は当該商標を使用したその権利に係る商品と同一若しくは類似の商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは当該商標を使用してその権利に係る役務と同一若しくは類似の役務を提供する行為

  2. 2.

    この法律において「商標」とは、商標法第2条第1項に規定する商標をいう。

  3. 3.

    この法律において「標章」とは、商標法第2条第1項に規定する標章をいう。

  4. 4.

    この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。

  5. 5.

    この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。

  6. 6.

    この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

  7. 7.

    この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。...)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。...)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

  8. 8.

    この法律において「プログラム」とは、電子計算機に対する指令であって、1の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。

  9. 9.

    この法律において「ドメイン名」とは、インターネットにおいて、個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号、記号又は文字の組合せに対応する文字、番号、記号その他の符号又はこれらの結合をいう。

  10. 10.

    この法律にいう「物」には、プログラムを含むものとする。

第2章 差止請求、損害賠償等 (第3条―第15条)

第3条差止請求権

  1. 1.

    不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

  2. 2.

    不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第5条 [損害の額の推定等] 第1項において同じ。...)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

第4条損害賠償

  1. 1.

    故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第15条 [消滅時効] の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。

第5条損害の額の推定等

  1. 1.

    第2条 [定義] 第1項第1号から第10号まで又は第16号に掲げる不正競争(同項第4号から第9号までに掲げるものにあっては、技術上の秘密に関するものに限る。...)によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」という。...)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。...)に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、被侵害者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

  2. 2.

    不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。

  3. 3.

    第2条 [定義] 第1項第1号から第9号まで、第13号又は第16号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

    1. (1)

      第2条 [定義] 第1項第1号又は第2号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品等表示の使用

    2. (2)

      第2条 [定義] 第1項第3号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品の形態の使用

    3. (3)

      第2条 [定義] 第1項第4号から第9号までに掲げる不正競争 当該侵害に係る営業秘密の使用

    4. (4)

      第2条 [定義] 第1項第13号に掲げる不正競争 当該侵害に係るドメイン名の使用

    5. (5)

      第2条 [定義] 第1項第16号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商標の使用

  4. 4.

    前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、その営業上の利益を侵害した者に故意又は重大な過失がなかったときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

第5条の2技術上の秘密を取得した者の当該技術上の秘密を使用する行為等の推定

  1. 1.

    技術上の秘密(生産方法その他政令で定める情報に係るものに限る。以下この条において同じ。...)について第2条 [定義] 第1項第4号、第5号又は第8号に規定する行為(営業秘密を取得する行為に限る。...)があった場合において、その行為をした者が当該技術上の秘密を使用する行為により生ずる物の生産その他技術上の秘密を使用したことが明らかな行為として政令で定める行為(以下この条において「生産等」という。...)をしたときは、その者は、それぞれ当該各号に規定する行為(営業秘密を使用する行為に限る。...)として生産等をしたものと推定する。

第6条具体的態様の明示義務

  1. 1.

    不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがあると主張する者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。

第7条書類の提出等

  1. 1.

    裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

  2. 2.

    裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。

  3. 3.

    裁判所は、前項の場合において、第1項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあっては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。...)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。

  4. 4.

    前3項の規定は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当該侵害行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。

第8条損害計算のための鑑定

  1. 1.

    不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。

第9条相当な損害額の認定

  1. 1.

    不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

第10条秘密保持命令

  1. 1.

    裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があった場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第1号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。

    1. (1)

      既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第7条 [書類の提出等] 第3項の規定により開示された書類又は第13条 [当事者尋問等の公開停止] 第4項の規定により開示された書面を含む。...)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。

    2. (2)

      前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。

  2. 2.

    前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。...)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。

    1. (1)

      秘密保持命令を受けるべき者

    2. (2)

      秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実

    3. (3)

      前項各号に掲げる事由に該当する事実

  3. 3.

    秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。

  4. 4.

    秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。

  5. 5.

    秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

第11条秘密保持命令の取消し

  1. 1.

    秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあっては、秘密保持命令を発した裁判所...)に対し、前条第1項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。

  2. 2.

    秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があった場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。

  3. 3.

    秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

  4. 4.

    秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。

  5. 5.

    裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。

第12条訴訟記録の閲覧等の請求の通知等

  1. 1.

    秘密保持命令が発せられた訴訟(すべての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く。...)に係る訴訟記録につき、民事訴訟法(平成8年法律第109号...)第92条第1項の決定があった場合において、当事者から同項に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行った者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、裁判所書記官は、同項の申立てをした当事者(その請求をした者を除く。第3項において同じ。...)に対し、その請求後直ちに、その請求があった旨を通知しなければならない。

  2. 2.

    前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があった日から2週間を経過する日までの間(その請求の手続を行った者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあっては、その申立てについての裁判が確定するまでの間...)、その請求の手続を行った者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。

  3. 3.

    前2項の規定は、第1項の請求をした者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第92条第1項の申立てをした当事者のすべての同意があるときは、適用しない。

第13条当事者尋問等の公開停止

  1. 1.

    不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当事者等が、その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であって当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、当事者本人若しくは法定代理人又は証人として尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該事項を判断の基礎とすべき不正競争による営業上の利益の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。

  2. 2.

    裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等の意見を聴かなければならない。

  3. 3.

    裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない。

  4. 4.

    裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。

  5. 5.

    裁判所は、第1項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。

第14条信用回復の措置

  1. 1.

    故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては、裁判所は、その営業上の信用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、その者の営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

第15条消滅時効

  1. 1.

    第2条 [定義] 第1項第4号から第9号までに掲げる不正競争のうち、営業秘密を使用する行為に対する第3条 [差止請求権] 第1項の規定による侵害の停止又は予防を請求する権利は、その行為を行う者がその行為を継続する場合において、その行為により営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある保有者がその事実及びその行為を行う者を知った時から3年間行わないときは、時効によって消滅する。その行為の開始の時から20年を経過したときも、同様とする。

第3章 国際約束に基づく禁止行為 (第16条―第18条)

第16条外国の国旗等の商業上の使用禁止

  1. 1.

    何人も、外国の国旗若しくは国の紋章その他の記章であって経済産業省令で定めるもの(以下「外国国旗等」という。...)と同一若しくは類似のもの(以下「外国国旗等類似記章」という。...)を商標として使用し、又は外国国旗等類似記章を商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国国旗等類似記章を商標として使用して役務を提供してはならない。ただし、その外国国旗等の使用の許可(許可に類する行政処分を含む。以下同じ。...)を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは、この限りでない。

  2. 2.

    前項に規定するもののほか、何人も、商品の原産地を誤認させるような方法で、同項の経済産業省令で定める外国の国の紋章(以下「外国紋章」という。...)を使用し、又は外国紋章を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国紋章を使用して役務を提供してはならない。ただし、その外国紋章の使用の許可を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは、この限りでない。

  3. 3.

    何人も、外国の政府若しくは地方公共団体の監督用若しくは証明用の印章若しくは記号であって経済産業省令で定めるもの(以下「外国政府等記号」という。...)と同一若しくは類似のもの(以下「外国政府等類似記号」という。...)をその外国政府等記号が用いられている商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務の商標として使用し、又は外国政府等類似記号を当該商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国政府等類似記号を当該商標として使用して役務を提供してはならない。ただし、その外国政府等記号の使用の許可を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは、この限りでない。

第17条国際機関の標章の商業上の使用禁止

  1. 1.

    何人も、その国際機関(政府間の国際機関及びこれに準ずるものとして経済産業省令で定める国際機関をいう。以下この条において同じ。...)と関係があると誤認させるような方法で、国際機関を表示する標章であって経済産業省令で定めるものと同一若しくは類似のもの(以下「国際機関類似標章」という。...)を商標として使用し、又は国際機関類似標章を商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは国際機関類似標章を商標として使用して役務を提供してはならない。ただし、この国際機関の許可を受けたときは、この限りでない。

第18条外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止

  1. 1.

    何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

  2. 2.

    前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。

    1. (1)

      外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者

    2. (2)

      公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者

    3. (3)

      1又は2以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の100分の50を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。...)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者

    4. (4)

      国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。...)の公務に従事する者

    5. (5)

      外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者

第4章 雑則 (第19条―第20条)

第19条適用除外等

  1. 1.

    第3条 [差止請求権] から第15条 [消滅時効] まで、第21条 [罰則] (第2項第7号に係る部分を除く。...)及び第22条 [罰則] の規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。

    1. (1)

      第2条 [定義] 第1項第1号、第2号、第14号及び第16号に掲げる不正競争 商品若しくは営業の普通名称(ぶどうを原料又は材料とする物の原産地の名称であって、普通名称となったものを除く。...)若しくは同一若しくは類似の商品若しくは営業について慣用されている商品等表示(以下「普通名称等」と総称する。...)を普通に用いられる方法で使用し、若しくは表示をし、又は普通名称等を普通に用いられる方法で使用し、若しくは表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為(同項第14号及び第16号に掲げる不正競争の場合にあっては、普通名称等を普通に用いられる方法で表示をし、又は使用して役務を提供する行為を含む。...)

    2. (2)

      第2条 [定義] 第1項第1号、第2号及び第16号に掲げる不正競争 自己の氏名を不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。...)でなく使用し、又は自己の氏名を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為(同号に掲げる不正競争の場合にあっては、自己の氏名を不正の目的でなく使用して役務を提供する行為を含む。...)

    3. (3)

      第2条 [定義] 第1項第1号に掲げる不正競争 他人の商品等表示が需要者の間に広く認識される前からその商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示を使用する者又はその商品等表示に係る業務を承継した者がその商品等表示を不正の目的でなく使用し、又はその商品等表示を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

    4. (4)

      第2条 [定義] 第1項第2号に掲げる不正競争 他人の商品等表示が著名になる前からその商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示を使用する者又はその商品等表示に係る業務を承継した者がその商品等表示を不正の目的でなく使用し、又はその商品等表示を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

    5. (5)

      第2条 [定義] 第1項第3号に掲げる不正競争 次のいずれかに掲げる行為

      1. 日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
      2. 他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。...)がその商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
    6. (6)

      第2条 [定義] 第1項第4号から第9号までに掲げる不正競争 取引によって営業秘密を取得した者(その取得した時にその営業秘密について不正開示行為であること又はその営業秘密について不正取得行為若しくは不正開示行為が介在したことを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。...)がその取引によって取得した権原の範囲内においてその営業秘密を使用し、又は開示する行為

    7. (7)

      第2条 [定義] 第1項第10号に掲げる不正競争 第15条 [消滅時効] の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

    8. (8)

      第2条 [定義] 第1項第11号及び第12号に掲げる不正競争 技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる同項第11号及び第12号に規定する装置若しくはこれらの号に規定するプログラムを記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該プログラムを電気通信回線を通じて提供する行為

  2. 2.

    前項第2号又は第3号に掲げる行為によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、次の各号に掲げる行為の区分に応じて当該各号に定める者に対し、自己の商品又は営業との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。

    1. (1)

      前項第2号に掲げる行為 自己の氏名を使用する者(自己の氏名を使用した商品を自ら譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する者を含む。...)

    2. (2)

      前項第3号に掲げる行為 他人の商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用する者及びその商品等表示に係る業務を承継した者(その商品等表示を使用した商品を自ら譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する者を含む。...)

第19条の2政令等への委任

  1. 1.

    この法律に定めるもののほか、没収保全と滞納処分との手続の調整について必要な事項で、滞納処分に関するものは、政令で定める。

  2. 2.

    この法律に定めるもののほか、第32条 [第三者の財産の没収手続等] の規定による第三者の参加及び裁判に関する手続、第8章に規定する没収保全及び追徴保全に関する手続並びに第9章に規定する国際共助手続について必要な事項(前項に規定する事項を除く。...)は、最高裁判所規則で定める。

第20条経過措置

  1. 1.

    この法律の規定に基づき政令又は経済産業省令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令又は経済産業省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。...)を定めることができる。

第5章 罰則 (第21条・第22条)

第21条罰則

  1. 1.

    次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは2,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    1. (1)

      不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。以下この条において同じ。...)又は管理侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成11年法律第128号)第2条第4項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の保有者の管理を害する行為をいう。以下この条において同じ。...)により、営業秘密を取得した者

    2. (2)

      詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者

    3. (3)

      営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者

      1. 営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。...)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。
      2. 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
      3. 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。
    4. (4)

      営業秘密を保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示した者

    5. (5)

      営業秘密を保有者から示されたその役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。次号において同じ。...)又は従業者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、その営業秘密を使用し、又は開示した者(前号に掲げる者を除く。...)

    6. (6)

      営業秘密を保有者から示されたその役員又は従業者であった者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その在職中に、その営業秘密の管理に係る任務に背いてその営業秘密の開示の申込みをし、又はその営業秘密の使用若しくは開示について請託を受けて、その営業秘密をその職を退いた後に使用し、又は開示した者(第4号に掲げる者を除く。...)

    7. (7)

      不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第2号若しくは前3号の罪又は第3項第2号の罪(第2号及び前3号の罪に当たる開示に係る部分に限る。...)に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

    8. (8)

      不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第2号若しくは第4号から前号までの罪又は第3項第2号の罪(第2号及び第4号から前号までの罪に当たる開示に係る部分に限る。...)に当たる開示が介在したことを知って営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

    9. (9)

      不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、自己又は他人の第2号若しくは第4号から前号まで又は第3項第3号の罪に当たる行為(技術上の秘密を使用する行為に限る。以下この号及び次条第1項第2号において「違法使用行為」という。...)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者(当該物が違法使用行為により生じた物であることの情を知らないで譲り受け、当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者を除く。...)

  2. 2.

    次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    1. (1)

      不正の目的をもって第2条 [定義] 第1項第1号又は第14号に掲げる不正競争を行った者

    2. (2)

      他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で第2条 [定義] 第1項第2号に掲げる不正競争を行った者

    3. (3)

      不正の利益を得る目的で第2条 [定義] 第1項第3号に掲げる不正競争を行った者

    4. (4)

      不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第2条 [定義] 第1項第11号又は第12号に掲げる不正競争を行った者

    5. (5)

      商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をした者(第1号に掲げる者を除く。...)

    6. (6)

      秘密保持命令に違反した者

    7. (7)
  3. 3.

    次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは3,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    1. (1)

      日本国外において使用する目的で、第1項第1号又は第3号の罪を犯した者

    2. (2)

      相手方に日本国外において第1項第2号又は第4号から第8号までの罪に当たる使用をする目的があることの情を知って、これらの罪に当たる開示をした者

    3. (3)

      日本国内において事業を行う保有者の営業秘密について、日本国外において第1項第2号又は第4号から第8号までの罪に当たる使用をした者

  4. 4.

    第1項(第3号を除く。...)並びに前項第1号(第1項第3号に係る部分を除く。...)、第2号及び第3号の罪の未遂は、罰する。

  5. 5.

    第2項第6号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

  6. 6.

    第1項各号(第9号を除く。...)、第3項第1号若しくは第2号又は第4項(第1項第9号に係る部分を除く。...)の罪は、日本国内において事業を行う保有者の営業秘密について、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。

  7. 7.

    第2項第6号の罪は、日本国外において同号の罪を犯した者にも適用する。

  8. 8.

    第2項第7号(第18条 [外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止] 第1項に係る部分に限る。...)の罪は、刑法(明治40年法律第45号...)第3条の例に従う。

  9. 9.

    第1項から第4項までの規定は、刑法その他の罰則の適用を妨げない。

  10. 10.

    次に掲げる財産は、これを没収することができる。

    1. (1)

      第1項、第3項及び第4項の罪の犯罪行為により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産

    2. (2)

      前号に掲げる財産の果実として得た財産、同号に掲げる財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他同号に掲げる財産の保有又は処分に基づき得た財産

  11. 11.

    組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号。以下「組織的犯罪処罰法」という。...)第14条及び第15条の規定は、前項の規定による没収について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第14条中「前条第1項各号又は第4項各号」とあるのは、「不正競争防止法第21条第10項各号」と読み替えるものとする。

  12. 12.

    第10項各号に掲げる財産を没収することができないとき、又は当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、その価額を犯人から追徴することができる。

第22条罰則

  1. 1.

    法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

    1. (1)

      前条第3項第1号(同条第1項第1号に係る部分に限る。...)、第2号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。...)若しくは第3号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。...)又は第4項(同条第3項第1号(同条第1項第1号に係る部分に限る。)、第2号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)及び第3号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)に係る部分に限る。...) 10億円以下の罰金刑

    2. (2)

      前条第1項第1号、第2号、第7号、第8号若しくは第9号(同項第4号から第6号まで又は同条第3項第3号(同条第1項第4号から第6号までに係る部分に限る。)の罪に係る違法使用行為(以下この号及び第3項において「特定違法使用行為」という。)をした者が該当する場合を除く。...)又は第4項(同条第1項第1号、第2号、第7号、第8号及び第9号(特定違法使用行為をした者が該当する場合を除く。)に係る部分に限る。...) 5億円以下の罰金刑

    3. (3)

      前条第2項 3億円以下の罰金刑

  2. 2.

    前項の場合において、当該行為者に対してした前条第2項第6号の罪に係る同条第5項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。

  3. 3.

    第1項の規定により前条第1項第1号、第2号、第7号、第8号若しくは第9号(特定違法使用行為をした者が該当する場合を除く。...)、第2項、第3項第1号(同条第1項第1号に係る部分に限る。...)、第2号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。...)若しくは第3号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。...)又は第4項(同条第1項第1号、第2号、第7号、第8号及び第9号(特定違法使用行為をした者が該当する場合を除く。)並びに同条第3項第1号(同条第1項第1号に係る部分に限る。)、第2号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)及び第3号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)に係る部分に限る。...)の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。

第6章 刑事訴訟手続の特例 (第23条―第31条)

第23条営業秘密の秘匿決定等

  1. 1.

    裁判所は、第21条 [罰則] 第1項、第3項若しくは第4項の罪又は前条第1項(第3号を除く。...)の罪に係る事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該事件に係る営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにされたくない旨の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

  2. 2.

    前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

  3. 3.

    裁判所は、第1項に規定する事件を取り扱う場合において、検察官又は被告人若しくは弁護人から、被告人その他の者の保有する営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにされたくない旨の申出があるときは、相手方の意見を聴き、当該事項が犯罪の証明又は被告人の防御のために不可欠であり、かつ、当該事項が公開の法廷で明らかにされることにより当該営業秘密に基づく被告人その他の者の事業活動に著しい支障を生ずるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

  4. 4.

    裁判所は、第1項又は前項の決定(以下「秘匿決定」という。...)をした場合において、必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、決定で、営業秘密構成情報特定事項(秘匿決定により公開の法廷で明らかにしないこととされた営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。...)に係る名称その他の表現に代わる呼称その他の表現を定めることができる。

  5. 5.

    裁判所は、秘匿決定をした事件について、営業秘密構成情報特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至ったとき、又は刑事訴訟法(昭和23年法律第131号...)第312条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第1項に規定する事件に該当しなくなったときは、決定で、秘匿決定の全部又は一部及び当該秘匿決定に係る前項の決定(以下「呼称等の決定」という。...)の全部又は一部を取り消さなければならない。

第24条起訴状の朗読方法の特例

  1. 1.

    秘匿決定があったときは、刑事訴訟法第291条第1項の起訴状の朗読は、営業秘密構成情報特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。

第25条尋問等の制限

  1. 1.

    裁判長は、秘匿決定があった場合において、訴訟関係人のする尋問又は陳述が営業秘密構成情報特定事項にわたるときは、これを制限することにより、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、当該尋問又は陳述を制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、同様とする。

  2. 2.

    刑事訴訟法第295条第5項及び第6項の規定は、前項の規定による命令を受けた検察官又は弁護士である弁護人がこれに従わなかった場合について準用する。

第26条公判期日外の証人尋問等

  1. 1.

    裁判所は、秘匿決定をした場合において、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人を尋問するとき、又は被告人が任意に供述をするときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人の尋問若しくは供述又は被告人に対する供述を求める行為若しくは被告人の供述が営業秘密構成情報特定事項にわたり、かつ、これが公開の法廷で明らかにされることにより当該営業秘密に基づく被害者、被告人その他の者の事業活動に著しい支障を生ずるおそれがあり、これを防止するためやむを得ないと認めるときは、公判期日外において当該尋問又は刑事訴訟法第311条第2項及び第3項に規定する被告人の供述を求める手続をすることができる。

  2. 2.

    刑事訴訟法第157条第1項及び第2項、第158条第2項及び第3項、第159条第1項、第273条第2項、第274条並びに第303条の規定は、前項の規定による被告人の供述を求める手続について準用する。この場合において、同法第157条第1項、第158条第3項及び第159条第1項中「被告人又は弁護人」とあるのは「弁護人、共同被告人又はその弁護人」と、同法第158条第2項中「被告人及び弁護人」とあるのは「弁護人、共同被告人及びその弁護人」と、同法第273条第2項中「公判期日」とあるのは「不正競争防止法第26条第1項の規定による被告人の供述を求める手続の期日」と、同法第274条中「公判期日」とあるのは「不正競争防止法第26条第1項の規定による被告人の供述を求める手続の日時及び場所」と、同法第303条中「証人その他の者の尋問、検証、押収及び捜索の結果を記載した書面並びに押収した物」とあるのは「不正競争防止法第26条第1項の規定による被告人の供述を求める手続の結果を記載した書面」と、「証拠書類又は証拠物」とあるのは「証拠書類」と読み替えるものとする。

第27条尋問等に係る事項の要領を記載した書面の提示命令

  1. 1.

    裁判所は、呼称等の決定をし、又は前条第1項の規定により尋問若しくは被告人の供述を求める手続を公判期日外においてする旨を定めるに当たり、必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人に対し、訴訟関係人のすべき尋問若しくは陳述又は被告人に対する供述を求める行為に係る事項の要領を記載した書面の提示を命ずることができる。

第28条証拠書類の朗読方法の特例

  1. 1.

    秘匿決定があったときは、刑事訴訟法第305条第1項又は第2項の規定による証拠書類の朗読は、営業秘密構成情報特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。

第29条公判前整理手続等における決定

  1. 1.

    次に掲げる事項は、公判前整理手続及び期日間整理手続において行うことができる。

    1. (1)

      秘匿決定若しくは呼称等の決定又はこれらの決定を取り消す決定をすること。

    2. (2)

      第26条 [公判期日外の証人尋問等] 第1項の規定により尋問又は被告人の供述を求める手続を公判期日外においてする旨を定めること。

第30条証拠開示の際の営業秘密の秘匿要請

  1. 1.

    検察官又は弁護人は、第23条 [営業秘密の秘匿決定等] 第1項に規定する事件について、刑事訴訟法第299条第1項の規定により証拠書類又は証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、第23条 [営業秘密の秘匿決定等] 第1項又は第3項に規定する営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項が明らかにされることにより当該営業秘密に基づく被害者、被告人その他の者の事業活動に著しい支障を生ずるおそれがあると認めるときは、相手方に対し、その旨を告げ、当該事項が、犯罪の証明若しくは犯罪の捜査又は被告人の防御に関し必要がある場合を除き、関係者(被告人を含む。...)に知られないようにすることを求めることができる。ただし、被告人に知られないようにすることを求めることについては、当該事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限る。

  2. 2.

    前項の規定は、検察官又は弁護人が刑事訴訟法第2編第3章第2節第1款第2目(同法第316条の28第2項において準用する場合を含む。...)の規定による証拠の開示をする場合について準用する。

第7章 没収に関する手続等の特例 (第32条―第34条)

第32条第三者の財産の没収手続等

  1. 1.

    第21条 [罰則] 第10項各号に掲げる財産である債権等(不動産及び動産以外の財産をいう。第34条 [刑事補償の特例] において同じ。...)が被告人以外の者(以下この条において「第三者」という。...)に帰属する場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。

  2. 2.

    第21条 [罰則] 第10項の規定により、地上権、抵当権その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収しようとする場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときも、前項と同様とする。

  3. 3.

    組織的犯罪処罰法第18条第3項から第5項までの規定は、地上権、抵当権その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収する場合において、第21条第11項において準用する組織的犯罪処罰法第15条第2項の規定により当該権利を存続させるべきときについて準用する。

  4. 4.

    第1項及び第2項に規定する財産の没収に関する手続については、この法律に特別の定めがあるもののほか、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和38年法律第138号...)の規定を準用する。

第33条没収された債権等の処分等

  1. 1.

    組織的犯罪処罰法第19条の規定は第21条第10項の規定による没収について、組織的犯罪処罰法第20条の規定は権利の移転について登記又は登録を要する財産を没収する裁判に基づき権利の移転の登記又は登録を関係機関に嘱託する場合について準用する。この場合において、同条中「次章第1節」とあるのは、「不正競争防止法第8章」と読み替えるものとする。

第34条刑事補償の特例

  1. 1.

    債権等の没収の執行に対する刑事補償法(昭和25年法律第1号...)による補償の内容については、同法第4条第6項の規定を準用する。

第8章 保全手続 (第35条・第36条)

第35条没収保全命令

  1. 1.

    裁判所は、第21条 [罰則] 第1項、第3項及び第4項の罪に係る被告事件に関し、同条第10項の規定により没収することができる財産(以下「没収対象財産」という。...)に当たると思料するに足りる相当な理由があり、かつ、当該財産を没収するため必要があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、没収保全命令を発して、当該財産につき、その処分を禁止することができる。

  2. 2.

    裁判所は、地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合において、当該権利が没収により消滅すると思料するに足りる相当な理由がある場合であって当該財産を没収するため必要があると認めるとき、又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当の理由があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、附帯保全命令を別に発して、当該権利の処分を禁止することができる。

  3. 3.

    裁判官は、前2項に規定する理由及び必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。...)の請求により、前2項に規定する処分をすることができる。

  4. 4.

    前3項に定めるもののほか、これらの規定による処分については、組織的犯罪処罰法第4章第1節及び第3節の規定による没収保全命令及び附帯保全命令による処分の禁止の例による。

第36条追徴保全命令

  1. 1.

    裁判所は、第21条 [罰則] 第1項、第3項及び第4項の罪に係る被告事件に関し、同条第12項の規定により追徴すべき場合に当たると思料するに足りる相当な理由がある場合において、追徴の裁判の執行をすることができなくなるおそれがあり、又はその執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、追徴保全命令を発して、被告人に対し、その財産の処分を禁止することができる。

  2. 2.

    裁判官は、前項に規定する理由及び必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官の請求により、同項に規定する処分をすることができる。

  3. 3.

    前2項に定めるもののほか、これらの規定による処分については、組織的犯罪処罰法第4章第2節及び第3節の規定による追徴保全命令による処分の禁止の例による。

第9章 没収及び追徴の裁判の執行及び保全についての国際共助手続等 (第37条―第40条)

第37条共助の実施

  1. 1.

    外国の刑事事件(当該事件において犯されたとされている犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、当該行為が第21条 [罰則] 第1項、第3項又は第4項の罪に当たる場合に限る。...)に関して、当該外国から、没収若しくは追徴の確定裁判の執行又は没収若しくは追徴のための財産の保全の共助の要請があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該要請に係る共助をすることができる。

    1. (1)

      共助犯罪(共助の要請において犯されたとされている犯罪をいう。以下この項において同じ。...)に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によればこれについて刑罰を科すことができないと認められるとき。

    2. (2)

      共助犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。

    3. (3)

      没収の確定裁判の執行の共助又は没収のための保全の共助については、共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、要請に係る財産が日本国の法令によれば共助犯罪について没収の裁判をし、又は没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき。

    4. (4)

      追徴の確定裁判の執行の共助又は追徴のための保全の共助については、共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によれば共助犯罪について追徴の裁判をし、又は追徴保全をすることができる場合に当たるものでないとき。

    5. (5)

      没収の確定裁判の執行の共助については要請に係る財産を有し又はその財産の上に地上権、抵当権その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者が、追徴の確定裁判の執行の共助については当該裁判を受けた者が、自己の責めに帰することのできない理由により、当該裁判に係る手続において自己の権利を主張することができなかったと認められるとき。

    6. (6)

      没収又は追徴のための保全の共助については、要請国の裁判所若しくは裁判官のした没収若しくは追徴のための保全の裁判に基づく要請である場合又は没収若しくは追徴の裁判の確定後の要請である場合を除き、共助犯罪に係る行為が行われたと疑うに足りる相当な理由がないとき、又は当該行為が日本国内で行われたとした場合において第35条 [没収保全命令] 第1項又は前条第1項に規定する理由がないと認められるとき。

  2. 2.

    地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産に係る没収の確定裁判の執行の共助をするに際し、日本国の法令により当該財産を没収するとすれば当該権利を存続させるべき場合に当たるときは、これを存続させるものとする。

第38条追徴とみなす没収

  1. 1.

    第21条 [罰則] 第10項各号に掲げる財産に代えて、その価額が当該財産の価額に相当する財産であって当該裁判を受けた者が有するものを没収する確定裁判の執行に係る共助の要請にあっては、当該確定裁判は、この法律による共助の実施については、その者から当該財産の価額を追徴する確定裁判とみなす。

  2. 2.

    前項の規定は、第21条第10項各号に掲げる財産に代えて、その価額が当該財産の価額に相当する財産を没収するための保全に係る共助の要請について準用する。

第39条要請国への共助の実施に係る財産等の譲与

  1. 1.

    第37条 [共助の実施] 第1項に規定する没収又は追徴の確定裁判の執行の共助の要請をした外国から、当該共助の実施に係る財産又はその価額に相当する金銭の譲与の要請があったときは、その全部又は一部を譲与することができる。

第40条組織的犯罪処罰法による共助等の例

  1. 1.

    前3条に定めるもののほか、第37条 [共助の実施] の規定による共助及び前条の規定による譲与については、組織的犯罪処罰法第6章の規定による共助及び譲与の例による。

第1条目的

  1. 1.

    この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

第2条定義

  1. 1.

    この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

    1. (1)

      他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

    2. (2)

      自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

    3. (3)

      他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

    4. (4)

      窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。)

    5. (5)

      その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

    6. (6)

      その取得した後にその営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

    7. (7)

      営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

    8. (8)

      その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

    9. (9)

      その取得した後にその営業秘密について不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

    10. (10)

      第4号から前号までに掲げる行為(技術上の秘密(営業秘密のうち、技術上の情報であるものをいう。以下同じ。)を使用する行為に限る。以下この号において「不正使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為(当該物を譲り受けた者(その譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生じた物であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)が当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を除く。)

    11. (11)

      営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品1式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)

    12. (12)

      他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品1式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)

    13. (13)

      不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為

    14. (14)

      商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

    15. (15)

      競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

    16. (16)

      パリ条約(商標法(昭和34年法律第127号)第4条第1項第2号に規定するパリ条約をいう。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。以下この号において単に「権利」という。)を有する者の代理人若しくは代表者又はその行為の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないでその権利に係る商標と同一若しくは類似の商標をその権利に係る商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用し、又は当該商標を使用したその権利に係る商品と同一若しくは類似の商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは当該商標を使用してその権利に係る役務と同一若しくは類似の役務を提供する行為

  2. 2.

    この法律において「商標」とは、商標法第2条第1項に規定する商標をいう。

  3. 3.

    この法律において「標章」とは、商標法第2条第1項に規定する標章をいう。

  4. 4.

    この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。

  5. 5.

    この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。

  6. 6.

    この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

  7. 7.

    この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

  8. 8.

    この法律において「プログラム」とは、電子計算機に対する指令であって、1の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。

  9. 9.

    この法律において「ドメイン名」とは、インターネットにおいて、個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号、記号又は文字の組合せに対応する文字、番号、記号その他の符号又はこれらの結合をいう。

  10. 10.

    この法律にいう「物」には、プログラムを含むものとする。

第3条差止請求権

  1. 1.

    不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

  2. 2.

    不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第5条第1項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

第4条損害賠償

  1. 1.

    故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第15条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。

第5条損害の額の推定等

  1. 1.

    第2条第1項第1号から第10号まで又は第16号に掲げる不正競争(同項第4号から第9号までに掲げるものにあっては、技術上の秘密に関するものに限る。)によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」という。)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、被侵害者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

  2. 2.

    不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。

  3. 3.

    第2条第1項第1号から第9号まで、第13号又は第16号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

    1. (1)

      第2条第1項第1号又は第2号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品等表示の使用

    2. (2)

      第2条第1項第3号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品の形態の使用

    3. (3)

      第2条第1項第4号から第9号までに掲げる不正競争 当該侵害に係る営業秘密の使用

    4. (4)

      第2条第1項第13号に掲げる不正競争 当該侵害に係るドメイン名の使用

    5. (5)

      第2条第1項第16号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商標の使用

  4. 4.

    前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、その営業上の利益を侵害した者に故意又は重大な過失がなかったときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

第5条の2技術上の秘密を取得した者の当該技術上の秘密を使用する行為等の推定

  1. 1.

    技術上の秘密(生産方法その他政令で定める情報に係るものに限る。以下この条において同じ。)について第2条第1項第4号、第5号又は第8号に規定する行為(営業秘密を取得する行為に限る。)があった場合において、その行為をした者が当該技術上の秘密を使用する行為により生ずる物の生産その他技術上の秘密を使用したことが明らかな行為として政令で定める行為(以下この条において「生産等」という。)をしたときは、その者は、それぞれ当該各号に規定する行為(営業秘密を使用する行為に限る。)として生産等をしたものと推定する。

第6条具体的態様の明示義務

  1. 1.

    不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがあると主張する者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。

第7条書類の提出等

  1. 1.

    裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

  2. 2.

    裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。

  3. 3.

    裁判所は、前項の場合において、第1項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあっては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。

  4. 4.

    前3項の規定は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当該侵害行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。

第8条損害計算のための鑑定

  1. 1.

    不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。

第9条相当な損害額の認定

  1. 1.

    不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

第10条秘密保持命令

  1. 1.

    裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があった場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第1号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。

    1. (1)

      既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第7条第3項の規定により開示された書類又は第13条第4項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。

    2. (2)

      前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。

  2. 2.

    前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。

    1. (1)

      秘密保持命令を受けるべき者

    2. (2)

      秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実

    3. (3)

      前項各号に掲げる事由に該当する事実

  3. 3.

    秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。

  4. 4.

    秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。

  5. 5.

    秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

第11条秘密保持命令の取消し

  1. 1.

    秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあっては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し、前条第1項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。

  2. 2.

    秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があった場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。

  3. 3.

    秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

  4. 4.

    秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。

  5. 5.

    裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。

第12条訴訟記録の閲覧等の請求の通知等

  1. 1.

    秘密保持命令が発せられた訴訟(すべての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く。)に係る訴訟記録につき、民事訴訟法(平成8年法律第109号)第92条第1項の決定があった場合において、当事者から同項に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行った者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、裁判所書記官は、同項の申立てをした当事者(その請求をした者を除く。第3項において同じ。)に対し、その請求後直ちに、その請求があった旨を通知しなければならない。

  2. 2.

    前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があった日から2週間を経過する日までの間(その請求の手続を行った者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあっては、その申立てについての裁判が確定するまでの間)、その請求の手続を行った者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。

  3. 3.

    前2項の規定は、第1項の請求をした者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第92条第1項の申立てをした当事者のすべての同意があるときは、適用しない。

第13条当事者尋問等の公開停止

  1. 1.

    不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当事者等が、その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であって当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、当事者本人若しくは法定代理人又は証人として尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該事項を判断の基礎とすべき不正競争による営業上の利益の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。

  2. 2.

    裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等の意見を聴かなければならない。

  3. 3.

    裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない。

  4. 4.

    裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。

  5. 5.

    裁判所は、第1項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。

第14条信用回復の措置

  1. 1.

    故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては、裁判所は、その営業上の信用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、その者の営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

第15条消滅時効

  1. 1.

    第2条第1項第4号から第9号までに掲げる不正競争のうち、営業秘密を使用する行為に対する第3条第1項の規定による侵害の停止又は予防を請求する権利は、その行為を行う者がその行為を継続する場合において、その行為により営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある保有者がその事実及びその行為を行う者を知った時から3年間行わないときは、時効によって消滅する。その行為の開始の時から20年を経過したときも、同様とする。

第16条外国の国旗等の商業上の使用禁止

  1. 1.

    何人も、外国の国旗若しくは国の紋章その他の記章であって経済産業省令で定めるもの(以下「外国国旗等」という。)と同一若しくは類似のもの(以下「外国国旗等類似記章」という。)を商標として使用し、又は外国国旗等類似記章を商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国国旗等類似記章を商標として使用して役務を提供してはならない。ただし、その外国国旗等の使用の許可(許可に類する行政処分を含む。以下同じ。)を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは、この限りでない。

  2. 2.

    前項に規定するもののほか、何人も、商品の原産地を誤認させるような方法で、同項の経済産業省令で定める外国の国の紋章(以下「外国紋章」という。)を使用し、又は外国紋章を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国紋章を使用して役務を提供してはならない。ただし、その外国紋章の使用の許可を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは、この限りでない。

  3. 3.

    何人も、外国の政府若しくは地方公共団体の監督用若しくは証明用の印章若しくは記号であって経済産業省令で定めるもの(以下「外国政府等記号」という。)と同一若しくは類似のもの(以下「外国政府等類似記号」という。)をその外国政府等記号が用いられている商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務の商標として使用し、又は外国政府等類似記号を当該商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国政府等類似記号を当該商標として使用して役務を提供してはならない。ただし、その外国政府等記号の使用の許可を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは、この限りでない。

第17条国際機関の標章の商業上の使用禁止

  1. 1.

    何人も、その国際機関(政府間の国際機関及びこれに準ずるものとして経済産業省令で定める国際機関をいう。以下この条において同じ。)と関係があると誤認させるような方法で、国際機関を表示する標章であって経済産業省令で定めるものと同一若しくは類似のもの(以下「国際機関類似標章」という。)を商標として使用し、又は国際機関類似標章を商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは国際機関類似標章を商標として使用して役務を提供してはならない。ただし、この国際機関の許可を受けたときは、この限りでない。

第18条外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止

  1. 1.

    何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

  2. 2.

    前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。

    1. (1)

      外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者

    2. (2)

      公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者

    3. (3)

      1又は2以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の100分の50を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者

    4. (4)

      国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。)の公務に従事する者

    5. (5)

      外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者

第19条適用除外等

  1. 1.

    第3条から第15条まで、第21条(第2項第7号に係る部分を除く。)及び第22条の規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。

    1. (1)

      第2条第1項第1号、第2号、第14号及び第16号に掲げる不正競争 商品若しくは営業の普通名称(ぶどうを原料又は材料とする物の原産地の名称であって、普通名称となったものを除く。)若しくは同一若しくは類似の商品若しくは営業について慣用されている商品等表示(以下「普通名称等」と総称する。)を普通に用いられる方法で使用し、若しくは表示をし、又は普通名称等を普通に用いられる方法で使用し、若しくは表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為(同項第14号及び第16号に掲げる不正競争の場合にあっては、普通名称等を普通に用いられる方法で表示をし、又は使用して役務を提供する行為を含む。)

    2. (2)

      第2条第1項第1号、第2号及び第16号に掲げる不正競争 自己の氏名を不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)でなく使用し、又は自己の氏名を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為(同号に掲げる不正競争の場合にあっては、自己の氏名を不正の目的でなく使用して役務を提供する行為を含む。)

    3. (3)

      第2条第1項第1号に掲げる不正競争 他人の商品等表示が需要者の間に広く認識される前からその商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示を使用する者又はその商品等表示に係る業務を承継した者がその商品等表示を不正の目的でなく使用し、又はその商品等表示を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

    4. (4)

      第2条第1項第2号に掲げる不正競争 他人の商品等表示が著名になる前からその商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示を使用する者又はその商品等表示に係る業務を承継した者がその商品等表示を不正の目的でなく使用し、又はその商品等表示を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

    5. (5)

      第2条第1項第3号に掲げる不正競争 次のいずれかに掲げる行為

      1. 日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
      2. 他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
    6. (6)

      第2条第1項第4号から第9号までに掲げる不正競争 取引によって営業秘密を取得した者(その取得した時にその営業秘密について不正開示行為であること又はその営業秘密について不正取得行為若しくは不正開示行為が介在したことを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその取引によって取得した権原の範囲内においてその営業秘密を使用し、又は開示する行為

    7. (7)

      第2条第1項第10号に掲げる不正競争 第15条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

    8. (8)

      第2条第1項第11号及び第12号に掲げる不正競争 技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる同項第11号及び第12号に規定する装置若しくはこれらの号に規定するプログラムを記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該プログラムを電気通信回線を通じて提供する行為

  2. 2.

    前項第2号又は第3号に掲げる行為によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、次の各号に掲げる行為の区分に応じて当該各号に定める者に対し、自己の商品又は営業との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。

    1. (1)

      前項第2号に掲げる行為 自己の氏名を使用する者(自己の氏名を使用した商品を自ら譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する者を含む。)

    2. (2)

      前項第3号に掲げる行為 他人の商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用する者及びその商品等表示に係る業務を承継した者(その商品等表示を使用した商品を自ら譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する者を含む。)

第19条の2政令等への委任

  1. 1.

    この法律に定めるもののほか、没収保全と滞納処分との手続の調整について必要な事項で、滞納処分に関するものは、政令で定める。

  2. 2.

    この法律に定めるもののほか、第32条の規定による第三者の参加及び裁判に関する手続、第8章に規定する没収保全及び追徴保全に関する手続並びに第9章に規定する国際共助手続について必要な事項(前項に規定する事項を除く。)は、最高裁判所規則で定める。

第20条経過措置

  1. 1.

    この法律の規定に基づき政令又は経済産業省令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令又は経済産業省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

第21条罰則

  1. 1.

    次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは2,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    1. (1)

      不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。以下この条において同じ。)又は管理侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成11年法律第128号)第2条第4項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の保有者の管理を害する行為をいう。以下この条において同じ。)により、営業秘密を取得した者

    2. (2)

      詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者

    3. (3)

      営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者

      1. 営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。
      2. 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
      3. 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。
    4. (4)

      営業秘密を保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示した者

    5. (5)

      営業秘密を保有者から示されたその役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。次号において同じ。)又は従業者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、その営業秘密を使用し、又は開示した者(前号に掲げる者を除く。)

    6. (6)

      営業秘密を保有者から示されたその役員又は従業者であった者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その在職中に、その営業秘密の管理に係る任務に背いてその営業秘密の開示の申込みをし、又はその営業秘密の使用若しくは開示について請託を受けて、その営業秘密をその職を退いた後に使用し、又は開示した者(第4号に掲げる者を除く。)

    7. (7)

      不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第2号若しくは前3号の罪又は第3項第2号の罪(第2号及び前3号の罪に当たる開示に係る部分に限る。)に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

    8. (8)

      不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第2号若しくは第4号から前号までの罪又は第3項第2号の罪(第2号及び第4号から前号までの罪に当たる開示に係る部分に限る。)に当たる開示が介在したことを知って営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

    9. (9)

      不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、自己又は他人の第2号若しくは第4号から前号まで又は第3項第3号の罪に当たる行為(技術上の秘密を使用する行為に限る。以下この号及び次条第1項第2号において「違法使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者(当該物が違法使用行為により生じた物であることの情を知らないで譲り受け、当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者を除く。)

  2. 2.

    次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    1. (1)

      不正の目的をもって第2条第1項第1号又は第14号に掲げる不正競争を行った者

    2. (2)

      他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で第2条第1項第2号に掲げる不正競争を行った者

    3. (3)

      不正の利益を得る目的で第2条第1項第3号に掲げる不正競争を行った者

    4. (4)

      不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第2条第1項第11号又は第12号に掲げる不正競争を行った者

    5. (5)

      商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をした者(第1号に掲げる者を除く。)

    6. (6)

      秘密保持命令に違反した者

    7. (7)

      第16条、第17条又は第18条第1項の規定に違反した者

  3. 3.

    次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは3,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    1. (1)

      日本国外において使用する目的で、第1項第1号又は第3号の罪を犯した者

    2. (2)

      相手方に日本国外において第1項第2号又は第4号から第8号までの罪に当たる使用をする目的があることの情を知って、これらの罪に当たる開示をした者

    3. (3)

      日本国内において事業を行う保有者の営業秘密について、日本国外において第1項第2号又は第4号から第8号までの罪に当たる使用をした者

  4. 4.

    第1項(第3号を除く。)並びに前項第1号(第1項第3号に係る部分を除く。)、第2号及び第3号の罪の未遂は、罰する。

  5. 5.

    第2項第6号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

  6. 6.

    第1項各号(第9号を除く。)、第3項第1号若しくは第2号又は第4項(第1項第9号に係る部分を除く。)の罪は、日本国内において事業を行う保有者の営業秘密について、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。

  7. 7.

    第2項第6号の罪は、日本国外において同号の罪を犯した者にも適用する。

  8. 8.

    第2項第7号(第18条第1項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治40年法律第45号)第3条の例に従う。

  9. 9.

    第1項から第4項までの規定は、刑法その他の罰則の適用を妨げない。

  10. 10.

    次に掲げる財産は、これを没収することができる。

    1. (1)

      第1項、第3項及び第4項の罪の犯罪行為により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産

    2. (2)

      前号に掲げる財産の果実として得た財産、同号に掲げる財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他同号に掲げる財産の保有又は処分に基づき得た財産

  11. 11.

    組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第14条及び第15条の規定は、前項の規定による没収について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第14条中「前条第1項各号又は第4項各号」とあるのは、「不正競争防止法第21条第10項各号」と読み替えるものとする。

  12. 12.

    第10項各号に掲げる財産を没収することができないとき、又は当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、その価額を犯人から追徴することができる。

第22条罰則

  1. 1.

    法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

    1. (1)

      前条第3項第1号(同条第1項第1号に係る部分に限る。)、第2号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)若しくは第3号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)又は第4項(同条第3項第1号(同条第1項第1号に係る部分に限る。)、第2号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)及び第3号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)に係る部分に限る。) 10億円以下の罰金刑

    2. (2)

      前条第1項第1号、第2号、第7号、第8号若しくは第9号(同項第4号から第6号まで又は同条第3項第3号(同条第1項第4号から第6号までに係る部分に限る。)の罪に係る違法使用行為(以下この号及び第3項において「特定違法使用行為」という。)をした者が該当する場合を除く。)又は第4項(同条第1項第1号、第2号、第7号、第8号及び第9号(特定違法使用行為をした者が該当する場合を除く。)に係る部分に限る。) 5億円以下の罰金刑

    3. (3)

      前条第2項 3億円以下の罰金刑

  2. 2.

    前項の場合において、当該行為者に対してした前条第2項第6号の罪に係る同条第5項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。

  3. 3.

    第1項の規定により前条第1項第1号、第2号、第7号、第8号若しくは第9号(特定違法使用行為をした者が該当する場合を除く。)、第2項、第3項第1号(同条第1項第1号に係る部分に限る。)、第2号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)若しくは第3号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)又は第4項(同条第1項第1号、第2号、第7号、第8号及び第9号(特定違法使用行為をした者が該当する場合を除く。)並びに同条第3項第1号(同条第1項第1号に係る部分に限る。)、第2号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)及び第3号(同条第1項第2号、第7号及び第8号に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。

第23条営業秘密の秘匿決定等

  1. 1.

    裁判所は、第21条第1項、第3項若しくは第4項の罪又は前条第1項(第3号を除く。)の罪に係る事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該事件に係る営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにされたくない旨の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

  2. 2.

    前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

  3. 3.

    裁判所は、第1項に規定する事件を取り扱う場合において、検察官又は被告人若しくは弁護人から、被告人その他の者の保有する営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにされたくない旨の申出があるときは、相手方の意見を聴き、当該事項が犯罪の証明又は被告人の防御のために不可欠であり、かつ、当該事項が公開の法廷で明らかにされることにより当該営業秘密に基づく被告人その他の者の事業活動に著しい支障を生ずるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

  4. 4.

    裁判所は、第1項又は前項の決定(以下「秘匿決定」という。)をした場合において、必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、決定で、営業秘密構成情報特定事項(秘匿決定により公開の法廷で明らかにしないこととされた営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)に係る名称その他の表現に代わる呼称その他の表現を定めることができる。

  5. 5.

    裁判所は、秘匿決定をした事件について、営業秘密構成情報特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至ったとき、又は刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第312条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第1項に規定する事件に該当しなくなったときは、決定で、秘匿決定の全部又は一部及び当該秘匿決定に係る前項の決定(以下「呼称等の決定」という。)の全部又は一部を取り消さなければならない。

第24条起訴状の朗読方法の特例

  1. 1.

    秘匿決定があったときは、刑事訴訟法第291条第1項の起訴状の朗読は、営業秘密構成情報特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。

第25条尋問等の制限

  1. 1.

    裁判長は、秘匿決定があった場合において、訴訟関係人のする尋問又は陳述が営業秘密構成情報特定事項にわたるときは、これを制限することにより、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、当該尋問又は陳述を制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、同様とする。

  2. 2.

    刑事訴訟法第295条第5項及び第6項の規定は、前項の規定による命令を受けた検察官又は弁護士である弁護人がこれに従わなかった場合について準用する。

第26条公判期日外の証人尋問等

  1. 1.

    裁判所は、秘匿決定をした場合において、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人を尋問するとき、又は被告人が任意に供述をするときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人の尋問若しくは供述又は被告人に対する供述を求める行為若しくは被告人の供述が営業秘密構成情報特定事項にわたり、かつ、これが公開の法廷で明らかにされることにより当該営業秘密に基づく被害者、被告人その他の者の事業活動に著しい支障を生ずるおそれがあり、これを防止するためやむを得ないと認めるときは、公判期日外において当該尋問又は刑事訴訟法第311条第2項及び第3項に規定する被告人の供述を求める手続をすることができる。

  2. 2.

    刑事訴訟法第157条第1項及び第2項、第158条第2項及び第3項、第159条第1項、第273条第2項、第274条並びに第303条の規定は、前項の規定による被告人の供述を求める手続について準用する。この場合において、同法第157条第1項、第158条第3項及び第159条第1項中「被告人又は弁護人」とあるのは「弁護人、共同被告人又はその弁護人」と、同法第158条第2項中「被告人及び弁護人」とあるのは「弁護人、共同被告人及びその弁護人」と、同法第273条第2項中「公判期日」とあるのは「不正競争防止法第26条第1項の規定による被告人の供述を求める手続の期日」と、同法第274条中「公判期日」とあるのは「不正競争防止法第26条第1項の規定による被告人の供述を求める手続の日時及び場所」と、同法第303条中「証人その他の者の尋問、検証、押収及び捜索の結果を記載した書面並びに押収した物」とあるのは「不正競争防止法第26条第1項の規定による被告人の供述を求める手続の結果を記載した書面」と、「証拠書類又は証拠物」とあるのは「証拠書類」と読み替えるものとする。

第27条尋問等に係る事項の要領を記載した書面の提示命令

  1. 1.

    裁判所は、呼称等の決定をし、又は前条第1項の規定により尋問若しくは被告人の供述を求める手続を公判期日外においてする旨を定めるに当たり、必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人に対し、訴訟関係人のすべき尋問若しくは陳述又は被告人に対する供述を求める行為に係る事項の要領を記載した書面の提示を命ずることができる。

第28条証拠書類の朗読方法の特例

  1. 1.

    秘匿決定があったときは、刑事訴訟法第305条第1項又は第2項の規定による証拠書類の朗読は、営業秘密構成情報特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。

第29条公判前整理手続等における決定

  1. 1.

    次に掲げる事項は、公判前整理手続及び期日間整理手続において行うことができる。

    1. (1)

      秘匿決定若しくは呼称等の決定又はこれらの決定を取り消す決定をすること。

    2. (2)

      第26条第1項の規定により尋問又は被告人の供述を求める手続を公判期日外においてする旨を定めること。

第30条証拠開示の際の営業秘密の秘匿要請

  1. 1.

    検察官又は弁護人は、第23条第1項に規定する事件について、刑事訴訟法第299条第1項の規定により証拠書類又は証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、第23条第1項又は第3項に規定する営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項が明らかにされることにより当該営業秘密に基づく被害者、被告人その他の者の事業活動に著しい支障を生ずるおそれがあると認めるときは、相手方に対し、その旨を告げ、当該事項が、犯罪の証明若しくは犯罪の捜査又は被告人の防御に関し必要がある場合を除き、関係者(被告人を含む。)に知られないようにすることを求めることができる。ただし、被告人に知られないようにすることを求めることについては、当該事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限る。

  2. 2.

    前項の規定は、検察官又は弁護人が刑事訴訟法第2編第3章第2節第1款第2目(同法第316条の28第2項において準用する場合を含む。)の規定による証拠の開示をする場合について準用する。

第31条最高裁判所規則への委任

  1. 1.

    この法律に定めるもののほか、第23条から前条までの規定の実施に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

第32条第三者の財産の没収手続等

  1. 1.

    第21条第10項各号に掲げる財産である債権等(不動産及び動産以外の財産をいう。第34条において同じ。)が被告人以外の者(以下この条において「第三者」という。)に帰属する場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。

  2. 2.

    第21条第10項の規定により、地上権、抵当権その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収しようとする場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときも、前項と同様とする。

  3. 3.

    組織的犯罪処罰法第18条第3項から第5項までの規定は、地上権、抵当権その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収する場合において、第21条第11項において準用する組織的犯罪処罰法第15条第2項の規定により当該権利を存続させるべきときについて準用する。

  4. 4.

    第1項及び第2項に規定する財産の没収に関する手続については、この法律に特別の定めがあるもののほか、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和38年法律第138号)の規定を準用する。

第33条没収された債権等の処分等

  1. 1.

    組織的犯罪処罰法第19条の規定は第21条第10項の規定による没収について、組織的犯罪処罰法第20条の規定は権利の移転について登記又は登録を要する財産を没収する裁判に基づき権利の移転の登記又は登録を関係機関に嘱託する場合について準用する。この場合において、同条中「次章第1節」とあるのは、「不正競争防止法第8章」と読み替えるものとする。

第34条刑事補償の特例

  1. 1.

    債権等の没収の執行に対する刑事補償法(昭和25年法律第1号)による補償の内容については、同法第4条第6項の規定を準用する。

第35条没収保全命令

  1. 1.

    裁判所は、第21条第1項、第3項及び第4項の罪に係る被告事件に関し、同条第10項の規定により没収することができる財産(以下「没収対象財産」という。)に当たると思料するに足りる相当な理由があり、かつ、当該財産を没収するため必要があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、没収保全命令を発して、当該財産につき、その処分を禁止することができる。

  2. 2.

    裁判所は、地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合において、当該権利が没収により消滅すると思料するに足りる相当な理由がある場合であって当該財産を没収するため必要があると認めるとき、又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当の理由があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、附帯保全命令を別に発して、当該権利の処分を禁止することができる。

  3. 3.

    裁判官は、前2項に規定する理由及び必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。)の請求により、前2項に規定する処分をすることができる。

  4. 4.

    前3項に定めるもののほか、これらの規定による処分については、組織的犯罪処罰法第4章第1節及び第3節の規定による没収保全命令及び附帯保全命令による処分の禁止の例による。

第36条追徴保全命令

  1. 1.

    裁判所は、第21条第1項、第3項及び第4項の罪に係る被告事件に関し、同条第12項の規定により追徴すべき場合に当たると思料するに足りる相当な理由がある場合において、追徴の裁判の執行をすることができなくなるおそれがあり、又はその執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、追徴保全命令を発して、被告人に対し、その財産の処分を禁止することができる。

  2. 2.

    裁判官は、前項に規定する理由及び必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官の請求により、同項に規定する処分をすることができる。

  3. 3.

    前2項に定めるもののほか、これらの規定による処分については、組織的犯罪処罰法第4章第2節及び第3節の規定による追徴保全命令による処分の禁止の例による。

第37条共助の実施

  1. 1.

    外国の刑事事件(当該事件において犯されたとされている犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、当該行為が第21条第1項、第3項又は第4項の罪に当たる場合に限る。)に関して、当該外国から、没収若しくは追徴の確定裁判の執行又は没収若しくは追徴のための財産の保全の共助の要請があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該要請に係る共助をすることができる。

    1. (1)

      共助犯罪(共助の要請において犯されたとされている犯罪をいう。以下この項において同じ。)に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によればこれについて刑罰を科すことができないと認められるとき。

    2. (2)

      共助犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。

    3. (3)

      没収の確定裁判の執行の共助又は没収のための保全の共助については、共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、要請に係る財産が日本国の法令によれば共助犯罪について没収の裁判をし、又は没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき。

    4. (4)

      追徴の確定裁判の執行の共助又は追徴のための保全の共助については、共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によれば共助犯罪について追徴の裁判をし、又は追徴保全をすることができる場合に当たるものでないとき。

    5. (5)

      没収の確定裁判の執行の共助については要請に係る財産を有し又はその財産の上に地上権、抵当権その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者が、追徴の確定裁判の執行の共助については当該裁判を受けた者が、自己の責めに帰することのできない理由により、当該裁判に係る手続において自己の権利を主張することができなかったと認められるとき。

    6. (6)

      没収又は追徴のための保全の共助については、要請国の裁判所若しくは裁判官のした没収若しくは追徴のための保全の裁判に基づく要請である場合又は没収若しくは追徴の裁判の確定後の要請である場合を除き、共助犯罪に係る行為が行われたと疑うに足りる相当な理由がないとき、又は当該行為が日本国内で行われたとした場合において第35条第1項又は前条第1項に規定する理由がないと認められるとき。

  2. 2.

    地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産に係る没収の確定裁判の執行の共助をするに際し、日本国の法令により当該財産を没収するとすれば当該権利を存続させるべき場合に当たるときは、これを存続させるものとする。

第38条追徴とみなす没収

  1. 1.

    第21条第10項各号に掲げる財産に代えて、その価額が当該財産の価額に相当する財産であって当該裁判を受けた者が有するものを没収する確定裁判の執行に係る共助の要請にあっては、当該確定裁判は、この法律による共助の実施については、その者から当該財産の価額を追徴する確定裁判とみなす。

  2. 2.

    前項の規定は、第21条第10項各号に掲げる財産に代えて、その価額が当該財産の価額に相当する財産を没収するための保全に係る共助の要請について準用する。

第39条要請国への共助の実施に係る財産等の譲与

  1. 1.

    第37条第1項に規定する没収又は追徴の確定裁判の執行の共助の要請をした外国から、当該共助の実施に係る財産又はその価額に相当する金銭の譲与の要請があったときは、その全部又は一部を譲与することができる。

第40条組織的犯罪処罰法による共助等の例

  1. 1.

    前3条に定めるもののほか、第37条の規定による共助及び前条の規定による譲与については、組織的犯罪処罰法第6章の規定による共助及び譲与の例による。